「豆屋」という落語を「仁義なき戦い」の名台詞を入れてやったじゃけん。
はじめに
前回、天狼院書店という本屋で落語をやった顛末を書いたけん、今回もまたやってきたがよ。
(前回のものはこちらけ→「天狼院書店の落語部で落語をやってきたってぇよ!!っていうお話」)
今回は、豆屋という演目。これを、仁義なき戦い風にアレンジをして、なんとか完成したんよ。なんで仁義なき戦いかいうと、我が敬愛する菅原文太の兄貴が死んじまって、悲しくてやりきれなかったからじゃけんな。ほいで、わしの中で追悼の意味も込めてやったけ。
その練習のために書いたもんを下に載せたけん、見ちょってくださいや。
「豆屋」
「こんな、豆っころで儲かるとは、いい商売だね。叔父さんもたまには、いいこと言いやがる。これから、この豆で、がっぽりと儲けるとしようや。そんだら、豆御殿でぇい、一生遊んで暮らそう。ほーれ、豆やー。豆やー。豆はいらんかねー。こっちの豆は美味しいよー。あっちの豆も美味しいよー。早いよー、安いよー、上手いよー」
「おう、豆屋」
「客の声がすんぞ。こりゃいいね。ガッツリ稼がしてもらおう。そんで、早速この銭で、とりあえず、女郎でも買にいっちまおうかな。いいね。」
「おう、豆屋、なにごちゃごちゃいっとるんじゃ。」
「こりゃ、すいません」
「豆売ってくれい」
「へい、そりゃもちろん」
「ほんなら、銭用いすっから、こっち入りや」
「へい、旦那」
「ほいで、一升、いくらじゃ」
「一升十銭でございます」
「ようきこえんのー」
「ありゃ、だから、一升十銭です」
「なんじゃ、われ、牛の糞にもだんだんがあるんで。おどれとわしは五寸か。」
「はい、つまりどういうことでしょう?」
「ゴロ売るなら、もちっとましな売り方せえや。そげな豆に一升十銭も払えるかい。安くせい」
「ちょっと待ってくださいよ。そんなに、すごまないでも。そりゃ、まけますよ。あなたの怖さに免じて、一升八銭でいかかでしょう」
「センズリかいて、そげな値段でくびくくっとれぃいうんか」
「あっ、すいません。じゃあいったい、いくらに負ければいいんでしょうか?」
「一升一銭じゃ」
「そりゃ、いくらなんでも・・・・」
「これが、なんなら分かるかい?」
「へい。あの、そりゃ、ピストルですか」
「そうじゃけん。弾はまだ、残っとるがよ。わしゃあ、われの命もらうも虫歯ぬくんも同じことなんで。おまえみたいな馬鹿とはもう話する気もせんわい」
「わ、わかりました。そりゃ、まけますよ。まけます。一銭でいいです。すいません。ごめんなさい。神様。仏様。旦那様」
「ほう、わかりゃええんじゃ。はよう、せんかい」
「焦らないで下さいよ。もう、とんでもないとこきちまった。えーと、一升なんで、豆を入れて、こうやって・・・・・」
「なんじゃい、われ、一升枡の上を手で横にはらっとるんなら」
「だって、これが、一升でしょう」
「一度山にしたものを、なんで落とすんじゃい」
「へい。すいません。だって、一銭にもまけてますし・・・・」
「なんじゃい。上乗せじゃ。」
「わかりましたよ。なら、ちょいっと、上乗せを・・・・」
「なんら、われ。指でちょいっとつまむなや。もっと乗せんかい。両手でがっつりいれろい」
「へ、へい。こうですか?」
「もっとじゃ」
「あー、もう大まけだ」
「よし。ここにあけろ。さぁ、一銭じゃ。もってけ」
「あれ、本気だ」
「なんじゃい?このへんの喧嘩いうたら、とるかとられるかの二つしかありゃせんので」
「へ、へへい。分かりました。もう帰ります。それで大丈夫です」
「よし、礼を言わんかい」
「あっ、はい。ありがとうございました」
「おう、贔屓にしてらぁ」
「なんだい、ありゃ。もう二度と行かないよ。あーもうやだ。ダメだ、ダメだ。叔父さんの言うことなんかきいて豆なんて売るんじゃなかった。豆は投げるのに限るな。鬼は外、鬼は外。はえとこ帰って、きょうは寝よう」
「おい、こらー豆屋」
「うぁーまた、恐そうなのがきたぞ。逃げよう」
「おどれ、なにしとんじゃ。追っ掛けて心張棒でドタマかち割るぞ」
「にげねぇですよ。へいなんでしょう」
「おんどれ、豆屋、ちっとこっち入れや。豆は一升いくらだ」
「さっきと同じだね。さては、兄貴かなんかかな。えーっと、豆はですね・・・・」
「何言うとるのん。ハッキリ言わんかい。一升いくらじゃい」
「怖いね。怖いね。えーーっと、一升一銭。」
「何ィ、カバチタレてんの。一升一銭じゃ」
「はぁ。そうです。なんなら、ただでもいいです」
「こりゃ、馬の糞け。ほんまもんの豆もってこいや」
「だって、本物ですよ」
「じゃかましいは、このクソ馬鹿たれ。いまのご時世、一升十銭が豆の相場じゃけんさては、盗んできたんじゃろうがい。それを一銭で売るとはええ、根性しとるの。そげな奴は、叩き殺して世の中を正しくするけ、覚悟しろい」
「待ってくださいよ。本当は、一升十銭なんです。」
「何言うとるがよ」
「あのぉ、先ほど、あんたみたいな怖い人に脅されて、この長屋で、一升十銭を一銭にまけさせられて。だって、まけねぇとピストルだしてきて、撃ち殺すっていうんですよ。だから、そんなこともう嫌だから、恐かったし、一升一銭って言ったんですよ。本当は一升十銭で売ってるんです」
「そんなら、はよ言わんかい。このクソ馬鹿たれ。ちゃんと一升十銭で売らんかい」
「はっ、ありがとうございます。あんたは、いい人だ。神様だ。仏様だ」
「照れるけ、褒めんなや。」
「はぁ。では、さっそく一升計りますね。こうやって、枡の上に豆をこう入れて、どうですか?」
「なんで、豆山盛りなんじゃい」
「おまけですよ。サービスです」
「なにしちょんの。キチンとやってみんかい」
「あら。さすが、旦那。こうやって、山ぁ横に払って、一升・・・。」
「まだ、多いじゃないの」
「いや、これで一升ですよ。しっかりやりました」
「じゃかましいや。商売人なら、少しは、ごまかして豆ぇ取り出すこともせんかい」
「ありがとうございます。そうですよね。さすが、旦那。こうやって・・・」
「なんで、指でつまむなのよ。ごそっとやらんかい」
「はい。そりゃ喜んで」
「もっとじゃい。ドッカーンと」
「はい。ドッカーン」
「ほいなら。枡ゥ逆さにして枡の尻ゥポンと叩かんかい」
「枡ゥ逆さ?ケツをポンっと。あれこれじゃ、空っぽじゃないの?」
「わしゃ、豆は買わん」
「えっ」
「豆アレルギーなんじゃい」
終わりに
まぁ、そげな感じで、仁義なき戦いの名台詞をふんだんに入れてやってみたんじゃけど、やっぱ一筋縄じゃいかんのよ。文章で書いとったら、ええ感じやなぁと思うけんど実際やると全くうまいようにいかん。所作であったり声の出し方やタイミングなんか、全くだめじゃけん。改めて、ホンマモンノ落語家さんの凄さ、要するにプロとトーシロの違いを実感したけーの。だけんど、次回も、懲りずになにかやっちゃるけ。弾はまだ残っとるがよ。
みずしままさゆき を著作者とするこの 作品 は クリエイティブ・コモンズの 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。
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