「嫌われる勇気」を読んで思ったこと、そして立川談志。
「嫌われる勇気」を読んで感じたことを以下に書いてみた。(とはいうものの、過去に違うブログで書いたものを引っ張り出して少しだけ、書き直したものである)
「嫌われたくない」
人間が、嫌われたくないと感じるのは、いままでの学習(経験)が大きく作用しているのではないだろうか。その学習を細かく分けると、この本でも語られていた、「トラウマ」や親の「ほめる」などの経験や体験があげられると思う。
そこで、人間の学習能力というものについて考えてみた。
生まれたての赤ちゃんは、自分ひとりで生きていけない。生きるためには、親が必要となる。その親が、この社会で生きていけるように、食を与えたり、言葉を覚えさせたり、学校に行かせたり、あらゆるものを提供し支援する。その過程で、様々なことや人との出会いを通じて学習する。
ウとンとコという言葉を組み合わせてウンコと発音し、人間のケツの穴から出る食物の消化できないカスという意味をもたせる。いきなりこんな汚い話をするなと憤慨すると思うが、もしこのウンコが綺麗なもので食べるとおいしいと、無垢な子どもに親が教え、学習させ記憶させられていたら(他の人からのウンコの情報が入ってこないようにして)その子どもは、ウンコを食べているだろう。
だから、あらゆるものが小さいころから現在に至るまでの学習によって自我を形成しているといえる。そうした中で、社会をみんなで生きるため、ありとあらゆる欲望をコントロールし衝動を押し殺し自我をコントロールしなければならない。
人間は、お腹が減ったからといって、他人から物を奪い食べる、気に入らないやつがいたら殺す、かわいい子がいたらいきなりやってしまう、などの行動はしない。それは、みんながより良く生きるために学習し、育み形成された社会システムがあるからである。それは、法律というもので守られ、空気というもので縛られ安定を保っている。
だが、それらは、しょせん人間が作ったものであるが故に、どこかで無理が生じてくる。その無理を開放させる(忘れさせてくれる)のが、お酒や麻薬、スポーツ、芸術という教養や遊びといった娯楽だろう。一方、無理を無理でなくしてくれる、「私は自我を守っています」=「この社会システムをしっかり守っているから認めてね」という承認欲求も当てはまるだろう。
ぼくが、このように考えるようになったのは落語家の立川談志の著作や落語を聞きだしてからである。詳しいことは書かないが、以下の動画を聞いてもらえばそのことが分かるだろう。
※落語になじみのない人は、これを是非聞いてもらいたい。↓
※「落語は人間の業である」ということが分かる作品↓
映画は爆弾だ
それらを踏まえて、ここからは映画について書きたい。
本物の爆弾は体への外部的なダメージをいかに与えるかだが、映画の爆弾は心への内部的なダメージをいかに与えるのかとぼくは考えている。
爆弾はスイッチを押したら一瞬で爆発する。映画における爆弾は映写してから終るまでの時間が、30分、90分、120分であろうと一瞬で終わったと感じるだろう。(もちろん、つまらない場合は長く感じると思うが、振り返って考えてみるとつまらない一瞬で記憶されていると思う)その一瞬が輝いていたら面白く、輝かない不発であればつまらない映画と言えるだろう。では、その輝きとはなんなのか。
映画は、カットの集積物。そのカットは時間を切り取った一瞬であり、最終的にそれを編集することで一瞬の物語が構築される。映画を輝かせるためには、一瞬であるカットをいかに特別なものに仕上げるかが重要だろう。だが、必ずしもカットが輝いているからといっても、素晴らしい映画になるとは限らない。完成という最終的な目的に向かってどのように一瞬を切り取ったかによって、映画全体が輝くか輝かないかが決まる。
人間は、タイムマシンが完成されなければ、一直線上の時間軸を生きるしかない。つまり、人間の記憶は、全て過去の中でしか生きられないということを意味する。そうすると未来は、修正が可能な過去であるといえる。未来はすぐに過去になってしまうからこそ、いま目の前にある未来は、どのようにでも修正することができるはずだ。
だからこそ、アドラーがいうように一瞬を刹那的に、後悔がないよう生きなくてはならないし、未来は修正できる過去なのだから、そうやって生きることが可能だ。そのためには輝く映画を完成させるように、まずは、確固たる導きの星を見つけ、それを見失わずに最終的に“生ききる”ことが重要なのだろう。
以上あくまで私的な戯言である。
おわり
みずしままさゆき を著作者とするこの 作品 は クリエイティブ・コモンズの 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。
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